●クレーム対応
クレームの多くは決まっています。例えば、食事に関することであれば、料理が間違って運ばれてきた、異物が混入している、出てくるのが遅い、味が足りないなど。
また、トラブルが多いのはお酒の席で、特に宴会時において発生する可能性があります。泊まりがけという解放感の中で温泉に入り、酔いが回るとトラブルが起こりがちです。同席者が間に入っても収まらない時はスタッフが仲裁に入り、当事者を引き離して個別に事情を聞いてあげることで、解決の糸口を見つけるようにします。お互い冷静になれば、たいていそこで収まります。
トラブルは宴会の時だけではありません。部屋食の場合にも起こることがあります。その場合、一般に3段階に分けてクレーム対応が行われます。まず、部屋やサービス(または接客)担当の仲居が対応し、次に担当チーフが対応します。それでも解決できない場合は最後に女将が対応にあたります。
クレームとよく似た言葉に「コンプレイン」があります。違いは、クレームが物品の損害賠償や支払い減額を求めるほどの苦情を言うのに対し、見返りを求めず、苦言を呈する、改善を求めるものをコンプレインと言うようです。
●施設見学
勉強熱心な女将は、自館のレベルアップを目指し、日々研究に励んでいます。その一つが近くの施設の見学です。お客さまに周辺の観光スポットをご案内するには、自分で訪れ、自分で感触をつかむのが一番です。そうすることでお客さまに自信をもってお勧めできるからです。四季ごとに名所旧跡、神社仏閣、新しい施設などを訪れ、それらの周囲も歩き、情緒のある裏道や抜け道、美しい風景などを実体験します。その情報はフロント係や仲居と共有します。実感のこもった情報はお客さまの心をとらえます。
また、他の地域で評判が良い旅館ホテルや、新しくオープンした旅館ホテルに滞在して、設備や各担当者の動き、料理の内容などを見学することも女将の大切な務めです。実際に自分の目で見て、肌で感じることは、いろいろな点で自館に役立つからです。自館に足りないところはできる範囲で積極的に取り入れます。マンネリ化したおもてなしはお客さまを飽きさせます。再び来館していただくためには、女将の日々切磋琢磨する努力にかかっています。
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■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。